シラバス

リスクの経済学(後期2単位)

客員教授 廣松 毅

1.授業のねらい・到達目標

 われわれは、日々、不確実な状況の下で決定を行っている。
 この授業は、不確実性の下での意思決定という観点から、リスクおよび情報の経済学に関する基礎について講義を行うことをねらいとしている。経済学の内容としては、主としてミクロ経済学の範囲である。
 まず、前提知識として完全情報・完全競争という仮定の下での市場均衡について説明した後、その効率性について議論する。このような仮定の下での意思決定とは「消費者や企業などの決定主体=経済主体が、自分がとりうる行動の中から、確実に得られる自分にとって最も好ましい結果を選ぶ=最適化すること」である。しかし、完全情報・完全競争の仮定は大変厳しく、一般には成り立たない。そのような場合に「市場の失敗」が起きる。特に、不確実性の下での意思決定では、完全情報・完全競争の下では起こり得ないような現象が多く生じる。たとえば情報の非対称性が存在する場合には、市場はうまく機能しないのである。
 この授業では、ミクロ経済学の基礎(完全情報・完全競争の下での経済主体の行動と市場の均衡)と不確実性の下での決定主体の行動について学ぶ。さらに、近年注目されている経済主体の心理を強調したプロスペクト理論を含む行動経済学についてもふれる。

2.授業計画

 ミクロ経済学の基礎(消費者行動、企業行動、完全市場の均衡)を5回、独占・寡占の不完全競争の理論(ゲーム理論も含む)を3回、不確実性を前提とした時に生じる現象(情報の非対称性、逆選択、ポートフォリオなど)を4回、オーソドックスな経済学に対するアンチテーゼとして最近注目されている行動経済学について2回程度を予定している。ただし、受講生の予備知識などによって変わることもある。

3.教科書

 ミクロ経済学の標準的な教科書は無数にある。とりあえず、ここでは多和田眞『コア・テキストミクロ経済学』新世社2005年をあげておく。

4.参考書

 ゲーム理論および情報の経済学に関して、神戸伸輔『入門・ゲーム理論と情報の経済学』日本評論社2004年をあげておく。その他については、必要に応じてその都度通知する

5.関連科目

組織行動と情報セキュリティ:経営学の科目(組織に関する考え方が経済学と大きく異なる)
セキュリティ管理と経営:経営分野におけるリスクの取扱いに関する科目
統計的リスク管理:リスクを定量的に表現する確率・統計に関する基礎科目
統計的方法論:統計的な実証分析を行うための手法に関する科目

6.成績評価の方法

レポートによって評価する。

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